食欲中枢と食欲の不思議
食事分量の調節・制限がサーチュイン遺伝子の活性化に関係していることを、前回の記事で見ました。
この考えをさらにすすめると、「そもそも、食欲はなぜ起きるのか?」という疑問につながります。
大元の食欲さえ自在にコントロールできれば、食べ過ぎてダイエット・・・という不経済なプロセスを、繰り返さずに済むわけですからね。
食欲についての研究が進むにつれ、食欲とは一つの固定的な原因で起きるものでなく、さまざまなホルモンや神経伝達物質、血糖値などが大脳内の視床下部にある中枢に刺激を与えることによって起きる、大変に複雑なプロセスであることが明らかになってきています。
食欲の調節に脳が関係しているらしいことは、かなり昔から実験的にわかっていたのですが、動物の脳に電気的刺激を与える実験によって、脳の「視床下部」という箇所が重要な役割を示していることがわかりました。
この中枢は、その位置によって「満腹中枢」と「空腹(摂食)中枢」の二つに分けて命名され、それぞれがホルモン分泌や血糖値上昇などの誘因によって刺激され、空腹感や満腹感を感じることが明らかになったわけです。
「満腹中枢」と「空腹中枢」が刺激されて食欲を感じたり、満腹感を感じたりするわけですが、問題はその刺激を引き起こす箇所や要因がいくつかあると考えられていることです。
たとえば大脳の扁桃体や前頭前野といった「視床下部」以外の部位も、空腹感の発現に何らかの関係があると言われています。
空腹中枢を刺激する要因としては、体脂肪や脳の温度なども挙げられています。
満腹感を感じさせるプロセスは、食物が胃に満ちることによって起こる「胃壁の拡張」と「血糖値の上昇」の二つの刺激によるということがほぼ判明していますが、空腹感を生じさせるプロセスについては、いまだにわからない点が多いようです。
「精神的ストレス」は、やけ食い・過食につながることもあれば、逆に過度の食欲不振につながることもありますね。
いずれも視床下部の中枢が影響を受けていることはわかりますが、その影響の与え方が異なり、正反対の結果をもたらしているわけです。
この食欲の調節機能が強い障害を受けると、拒食症や過食症などのいわゆる「摂食障害」につながることがあります。
現在、この視床下部の中枢に特定のシグナルを届け食欲を制御しようとするいわゆる「食欲減退薬」の開発が進んでいます。
海外ではすでにそのいくつかが認可されており、日本でもこれらを個人輸入して自ら利用する方もいるようです。
誰もが安全に利用できる食欲減退薬の決定版が登場する日も、意外にそう遠くないのかもしれませんね。




